小児腎臓専門外来
Pediatric Nephrology
小児腎臓専門医が在籍する小児科クリニックです
小児腎臓専門医が在籍する
小児科クリニックです
当院の院長は日本小児科学会専門医・指導医に加え、日本腎臓病学会専門医を取得しております。
これまで東京(国立成育医療研究センター・東京女子医科大学腎臓小児科)にて培った、数多くの難治小児腎臓疾患を患ったお子さまの治療経験を地域医療に還元して参ります。
夜尿症(おねしょ)をはじめ、お子さまが学校検尿などで異常を指摘された場合や、それ以外のご家庭などで気付かれた尿の異常など、腎臓に関することなら何でもご相談を承っております。
なお、夜尿症の初回のご相談に関しましては、火曜日・木曜日・金曜日に来院いただけますと幸いです。
夜尿症(おねしょ)
幼児期を過ぎても夜間、睡眠中に無意識に排尿してしまうことを夜尿と言います。幼児期は「おねしょ」と呼ぶことが多いのですが、5歳以降で月1回以上のおねしょが3か月以上続く場合は、夜尿症と診断します。
原因
主に以下の原因が挙げられます。
- 寝ている間に作られる尿の量が多い
- 膀胱が小さくて尿をためられない
- 膀胱の容量は正常だが夜間の尿量がそれを上回る
- 膀胱が尿であふれそうになっても起きられない
感染症や尿路奇形などの形態異常など疑う場合は尿検査、血液検査などを行います。
当院の方針
まずは生活改善指導を行い、改善なければアラーム療法や薬物療法による治療を行います。夜尿の原因は大きく分けると、夜寝ている間のおしっこの量が通常より多いか、夜寝ている間に膀胱に貯められるおしっこの量が通常より少ないか、あるいはその両方です。
そのため、治療としては夜間の尿量を減らすこと、及び夜間の膀胱容量を増やすことが中心になります。前者の場合は抗利尿ホルモン剤の内服が有効であり、後者の場合はアラーム療法や抗コリン剤の内服などが有効です。
生活改善
- 早寝、早起きをし、規則正しい生活をする
- 寝る前にトイレに行く
- 水分の摂取方法に気をつける
- 塩分を控える
- 便秘に気をつける
- 寝ている時の寒さや冷えから守る
- 夜中、無理にトイレに起こさない
薬物療法
- 尿の量を調整する薬:抗利尿ホルモン剤
- 膀胱の収縮を抑える薬:抗コリン剤
アラーム療法
おねしょを知らせるブザーで、尿が出ると「ピッ、ピッ」という電子音や振動で知らせる装置です。睡眠中の膀胱容量(蓄尿量)を増やし、夜尿回数を減らしていく方法です。効果が出てくると、夜中に起きなくても朝までおねしょをしないでおしっこをためられるようになります。
毎日実践する必要があるため、本人のモチベーションやご家族の協力が必要で、お子さまがおねしょを治したいと思うようであれば、試してみてもよい方法です。
夜尿症がお子さまに与える影響
おねしょはお子さまの自尊心を低下させたり、自信をなくしたり、学校生活や友人関係に影響を与えてしまうことがあります。
夜尿症による精神的な影響がストレスになって、夜尿を長引かせてしまうこともあるため、モチベーションを保てるように周囲が協力することも必要です。
よくある質問
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おねしょのあるこどもの数は多いですか?
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アレルギー疾患に次いで2番目に多い小児の慢性疾患といわれています。
日本の小中学生を含む5歳〜15歳の約80万人に夜尿症があると考えられています。
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お泊まりのときはどうすればいいですか?
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お泊り行事では、夜中にそっと起こしてもらう、朝早めに様子をみてもらう、効果のあるお薬を持っていく、夕方からは水分摂取を控えるなどの対策を、引率の先生に事前に相談しておくとよいでしょう。
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おねしょは直す必要がありますか?
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おねしょが続くことは、ご家族だけでなくお子さまにもストレスであると言われています。おねしょが続くことを「はずかしい失敗」と感じるようになると、気にしていないフリをしていても、繰り返される失敗により、こどもの自尊心は低下していきます。
また、夜尿が成人まで続いてしまう場合、治療はこどもよりも難しくなります。
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おねしょを相談する際に聞かれることはなんですか?
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受診の際は、どのくらいの頻度でおねしょがあったのかお子さまの生活の様子を伺います。
お子さまの1日の生活で「飲み物・食べ物の種類と量と摂取時間」「トイレの回数と尿の量」「便秘の有無」などをお伺いしますので、これらを記録したメモがあれば持参してください。
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夜中、無理にトイレに起こさないのは何故ですか?
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お子さまを夜中に無理に起こしてトイレに行かせるのは、眠るリズムを崩してしまいます。そのため、おしっこの量の調節や膀胱の働きが悪くなったり、寝ている時間におしっこをする習慣がついたりと、おねしょが治りにくくなる原因となることもあるので逆効果です。
各種検尿異常
学校検尿などで血尿や蛋白尿などの検尿異常を指摘された際には、当院にご相談ください。
血尿・蛋白尿の中には、経過を様子見ていて良いもの(良性家族性血尿、無症候性蛋白尿など)と、そうでないもの(急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群など)があります。いずれも鑑別するには臨床経験が必要となりますので、小児腎臓専門医にお任せください。
小児の血尿
「血尿」とは血液中の赤血球が尿中に漏れ出てくる現象です。程度により顕微鏡的血尿と肉眼的血尿に分類されます。顕微鏡的血尿とは見た目には分かりませんが、尿試験紙法にて潜血反応が陽性となります。一方で肉眼的血尿とは見た目にはっきりと紅茶やコカコーラのような異常な色調をした尿を指します。
家族歴のある顕微鏡的血尿の多くは良性家族性血尿として経過を見てよいものもありますが、一方で血尿に加え蛋白尿を同時に認める場合には、後述する腎炎(慢性糸球体腎炎)の可能性を考える必要があります。(最初は血尿だけでも、後々蛋白尿が出てくることもあります。)肉眼的血尿を認める場合には、急性糸球体腎炎や、慢性糸球体腎炎の急性増悪、尿路結石(小児では稀)などを考えます。
血尿の原因は多岐にわたり、特に顕微鏡的血尿の場合はすぐには診断がつけられない場合がしばしばあるため、小児腎臓専門医によるフォローが必要となります。
小児の蛋白尿
尿に蛋白が混じっている状態を「蛋白尿」といいます。尿の見た目では蛋白尿の判断は難しいので、学校検尿や血尿の精査に伴い指摘される場面が多いと思います。蛋白尿の中には治療の必要のない生理的蛋白尿(激しい運動、発熱、脱水などに伴い一時的に蛋白尿が出現)や起立性蛋白尿(安静時には異常なく、運動や体位により尿への蛋白排泄が増える)もあれば、ネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎に代表される病的蛋白尿があります。
生理的蛋白尿なのか、病的蛋白尿なのか、尿所見以外にも全身症状や経過から適切に診断する必要があります。当院では早期に病的蛋白尿を発見することで、適切なタイミングで高次医療機関に紹介させていただきます。
代表的な小児腎疾患
急性糸球体腎炎
のどの風邪など上気道感染症から1~2週間の潜伏期を経て発症する腎臓の病気です。感染症の原因としては溶連菌が90%を占めており、顔面・まぶた・足の浮腫(むくみ)、肉眼的血尿(褐色・コーラ色)、尿量低下、高血圧などが主な症状です。
治療は感染症の治療(溶連菌感染症であれば抗菌薬の内服)に加え、安静と塩分・水分制限です。尿量減少、浮腫、高血圧に対して一時的にお薬を使用することもありますが、一般的には自然治癒する病気です。
慢性糸球体腎炎
糸球体に慢性的な炎症が起こり、血尿・蛋白尿などの尿所見異常を1年以上認める疾患の総称です。IgA腎症、紫斑病性腎炎、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などが含まれますが、中でもIgA腎症が日本では最も頻度が高いとされます。発症及び進展の機序には、なんらかの免疫反応の異常が関与すると考えられております。確定診断には腎生検が必要となり、治療は原因疾患にもよりますが、その多くがステロイドを含む各種免疫抑制薬の投薬を必要とします。血尿に加え蛋白尿を認める場合には慢性糸球体腎炎を疑います。血尿単独である場合も、数か月の経過を経て蛋白尿が徐々に出現し、結果的に慢性糸球体腎炎であることもあります。
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群とは、血中の蛋白質が尿中に大量に漏れ出てしまう状態のことで、血液中の蛋白質の濃度が低下し、体がむくむ病気のことです。原因が何であれ、共通の症状がそろっている状態を「〇〇症候群」と呼ぶため、ネフローゼ症候群も1つの病名を指しているわけではなく、その原因となる腎臓の病気すべてを含みます。つまり、①高度の蛋白尿、②血液中の蛋白質濃度の低下という診断基準を満たしている腎臓の病気であれば、全て「ネフローゼ症候群」と呼びます。小児では、「特発性ネフローゼ症候群」が最も多く(90%)、日本では小児特発性ネフローゼ症候群は年間約1000人ほど新規に発症し、小児10万人当たり6.4人の頻度となります。男女比は2:1と男の子に多く、半数以上が5歳未満で発症します。症状は浮腫(むくみ)と尿量の減少です。血液中の蛋白質は水分を血管内に保つ役割があるので、蛋白尿が持続すると血管内の蛋白質が少なくなり、水分が血管から体の組織に漏れ出てむくみが生じます。顔や足のむくみで気付かれることが多く、消化管のむくみで腸の動きが悪くなると、吐き気、腹痛、下痢など胃腸炎に似た症状が認められることもあります。また、血管内の水分量が低下すると、腎臓に送られる血流量が減少するため、尿量が低下します。特発性ネフローゼ症候群の治療にまず使われる薬は、ステロイド薬です。多くの患者さまがこの治療で蛋白尿の消失と共に、症状は改善します。一方で小児特発性ネフローゼ症候群の再発頻度は高く、治療後も小児腎臓科医の定期フォローが重要です。